ひとことで言うと
「人として正しい原理は何か」だけでなく、「目の前の人にどう応えるか」「関係をどう保つか」を倫理の核に据える立場です。具体的な関係性から始まる倫理です。
定義
ケアの倫理は、人間を独立した自律的個人として捉える倫理学の伝統に対し、人間が常に他者との関係のなかで生き、互いに依存し合っているという事実を倫理の出発点に据えるアプローチです。具体的な状況下での応答可能性、責任、配慮を中心概念にします。
文脈と歴史
20世紀後半、心理学者キャロル・ギリガンによる道徳発達研究が出発点のひとつとなり、その後、政治哲学・看護倫理・福祉倫理など多領域に展開しました。ケア労働の社会的位置づけや、ケアを担う人々の権利をめぐる議論とも結びついて発展しています。
主要な論点
1. 正義の倫理との関係
普遍的原理に基づく「正義の倫理」と、関係性に根ざした「ケアの倫理」を、どう接続するかが古典的論点です。両者は対立するというより、相補的に働く倫理として論じられるようになっています。
2. 依存の倫理
人は誰もが、人生のある時期や状況で他者に依存します。依存を例外ではなく前提として倫理を組み立て直すという発想は、ケアの倫理の中核にあります。
3. ケア労働の評価
家庭・施設・医療などで担われるケア労働がどう評価され、誰によって担われているかという問題は、ケアの倫理の社会的実装と切り離せません。
4. 政治へのケアの拡張
近年は、ケアを家庭内のテーマにとどめず、社会制度・政策・国際関係にも広げる議論が進んでいます。ケアを社会の基盤として位置づけ直す動きです。
TSIRの研究との関わり
TSIRが扱う育児・支援・家族の現場は、まさにケアの倫理が問われる領域です。プロジェクト「支援現場の最前線」「子どもを持つ理由・持たない理由」では、関係性のなかで担われるケアと、それを支える条件をどう描くかが、研究の重要なテーマになっています。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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