ひとことで言うと
「自分は自分でいてよい」と人から認められること——その経験が、人がしっかり生きていくためにとても大事だ、という見方です。承認の欠如は、社会的な傷でもあります。
定義
承認(recognition)は、他者によって自己の存在・能力・尊厳が認められる関係を指す概念で、社会哲学・倫理学・社会理論で広く論じられています。アクセル・ホネットは、承認を「愛」「権利」「業績」の三つの形として論じ、それぞれの欠如が社会的不正義として現れることを強調しました。
文脈と歴史
哲学的にはヘーゲルの承認論にまで遡り、20世紀後半以降は、批判理論やフェミニズム、文化的多様性をめぐる政治理論のなかで、再び中心的な位置を占めるようになりました。再分配の正義と承認の正義をどう接続するかは、現代の論争のテーマです。
主要な論点
1. 承認の三形態
愛・権利・業績の三つの承認形態は、それぞれ親密圏、法的秩序、職業的領域に対応すると論じられます。それぞれの欠如は、自己関係に異なる傷を残します。
2. 再分配との関係
承認の正義と、所得や資源の再分配の正義は、どう関係するか。文化的承認だけでなく、物質的条件の問題を見落とさないことが、現代の論点になっています。
3. 誤承認
承認の不在だけでなく、歪められた承認(誤承認)も問題化されます。ステレオタイプによる承認は、当事者の自己理解を傷つける場合があります。
4. 現代社会への含意
SNS、職場、教育、家族などの場面で、人々がどう承認を求め、奪われ、与え合っているかは、現代社会を読み解く具体的な切り口になります。
TSIRの研究との関わり
TSIRが扱う家族・育児・支援・労働の現場は、いずれも承認の経験が問われる場です。プロジェクト「支援現場の最前線」では、「承認されること/されないこと」が、ケアを担う人々の経験と深く結びついています。承認の概念は、語りを社会的不正義の構造のなかに位置づけ直すための足場になります。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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