用語分類:家族社会学・福祉社会学 監修:吉岡詩織 最終更新:2026-05-09
ケア労働(care labor、ケアワーク)とは、他者の身体・生活・情緒を支えるために行われる具体的な世話の労働を指します。家族内で行われる無償のケア(育児・介護・家事)から、医療・福祉・保育・介護の現場で行われる有償のケアまでを含み、ジェンダー、福祉、労働、家族のいずれの領域とも交差する現代社会の中心的論点となっています。

ひとことで言うと

「赤ちゃんを世話する、お年寄りを介助する、病人に寄り添うような、人の身体と気持ちを支える具体的な労働」のことです。

定義

ケア労働(care labor)は、他者の身体的・情緒的・社会的なニーズに応える、具体的な世話の労働のことです。代表的にはエヴァ・キテイの定義「依存者を世話するための労働」や、上野千鶴子のケア論で詳述されています。

ケア労働には、(1)身体的なケア(食事、入浴、排泄、移動の介助)、(2)情緒的なケア(傾聴、安心の提供)、(3)社会的なケア(外部資源との接続、書類対応、関係調整)など、多面的な要素が含まれます。これらは互いに分かちがたく結びついた労働であり、「家事と育児」「介護と医療」のように切り分けて理解することは難しいことが知られています。

文脈と歴史

ケア労働の概念は、1970〜80年代のフェミニスト経済学・フェミニスト倫理学のなかで体系化されました。家庭内の無償労働を「労働」として可視化する作業(「主婦労働論争」)と、ケアの倫理学(C.ギリガン、N.ノディングス)の発展が、それぞれの方向から「ケア」を主題化しました。

1990年代以降、少子高齢化・女性の社会進出・福祉国家の再編のなかで、ケア労働は家族から社会へと部分的に移行しました。介護保険制度(2000年)、保育所整備、外国人ケア労働者の増加など、日本でもケアの社会化・市場化が進行しています。同時に、ケア労働者の低賃金、外国人ケア労働者の脆弱な労働条件など、新たな問題群が生まれています。

主要な論点

1. 無償ケアと有償ケアの連続性

家庭内の無償ケアと、施設・病院での有償ケアは、性質的には連続した労働です。家族介護を担っていた女性が、外部の介護労働者として働くという移行が広く見られます。両者を切り離さず、連続したケア労働として捉える視点が重要です。

2. ケアの「商品化」をめぐる議論

ケアを市場で取引可能な「商品」とすることは、ケア労働者の権利保障に資する一方で、ケアの質や倫理的次元を損なう可能性も指摘されてきました。ケアと市場の関係は、現代の福祉社会学の中心的論点です。

3. ケアラーの支援

家族介護者・ヤングケアラーへの支援は、ケア労働を「個人や家族の責任」に閉じこめないために重要です。ケアの分有・社会化は、現代社会の福祉政策の鍵となります。

TSIRの研究との関わり

子どもを持つ理由・持たない理由」プロジェクトでは、子育てというケア労働への参加・回避が、語り手の人生選択を大きく左右する主題として現れます。「発達障害に関するインタビュー(TABU)」では、家族・支援者が担うケア労働の重さ、その構造的な不可視性、社会的支援との接続が、繰り返し問われる論点です。

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参考文献・参考資料

※ 参考文献は順次追加・整理していきます。

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