用語分類:家族社会学 監修:吉岡詩織 最終更新:2026-05-09
性別役割分業(gendered division of labor)とは、性別を基準として、有償の稼得労働を主に男性に、無償の家事・育児・介護といったケア労働を主に女性に配分する社会的しくみを指します。「男は仕事、女は家庭」という規範として戦後日本社会に根強く存在し、近代家族の中核的特徴のひとつです。フェミニズム研究の主要な批判対象でもあります。

ひとことで言うと

「男性は外で働き、女性は家庭でケアする」というかたちで、性別を基準に労働を分け合うしくみのことです。

定義

性別役割分業(gendered division of labor)は、社会のなかで稼得労働とケア労働が、性別を基準として非対称に配分される構造を指します。日本でしばしば語られる「男は仕事、女は家庭」という規範は、この分業の典型的なイデオロギー的表現です。

重要なのは、これが個人の好みの問題ではなく、賃労働市場、家族制度、社会保障、教育、メディアなどに支えられた構造的なしくみであるという点です。男性の稼ぎ手規範、女性のケア規範、税制・社会保障の世帯主義、職業分離(女性が多い職種・男性が多い職種)などが、相互に強化しあって性別役割分業を再生産します。

文脈と歴史

性別役割分業の構造は、19世紀以降の産業化のなかで成立しました。前近代の家族では、男女がともに家族労働に参加する形態が広く見られましたが、産業化により「賃労働の場(公的領域)」と「家庭(私的領域)」が空間的・時間的に分離し、両者が性別と結びついて配分されました。

日本では、戦後の高度経済成長期に「男性稼ぎ主+専業主婦」という性別役割分業が普及しました。1970年代以降、フェミニズム運動と女性の高学歴化・就労拡大により、この構造は批判の対象となりつつ、依然として根強く残っています。M字型就労、家事育児時間のジェンダー・ギャップ、ケア責任を理由とする女性の就業中断などは、現代日本の性別役割分業の現れです。

主要な論点

1. 「無償労働」の不可視化

性別役割分業の中核的問題は、家事・育児・介護といったケア労働が「労働」として可視化されてこなかった点にあります。「主婦の仕事は労働ではない」という前提が、女性の社会的地位を低めてきました。ケア労働論は、この不可視性を問い直す仕事です。

2. 構造としての持続

多くの女性が労働市場に参加する現代でも、家事・育児時間のジェンダー・ギャップは大きく、女性に過重な負担がかかる「二重負担」が広く指摘されています。意識の変化と構造の変化のあいだに、依然として大きなずれがあります。

3. 男性の側からの問い

性別役割分業は女性だけの問題ではありません。男性の稼ぎ手規範もまた、男性に長時間労働や情緒的疎外を強いる構造として作用します。「父親としてのケア参加」をめぐる近年の議論は、性別役割分業を男性の側からも問い直す視点を提示しています。

TSIRの研究との関わり

子どもを持つ理由・持たない理由」「仕事・育児をしながら創作をする理由」プロジェクトは、いずれも性別役割分業の現代的な姿と深く関わります。子育てとキャリアと創作を両立させる経験、配偶者との家事育児分担、職場の理解などの主題は、性別役割分業の構造と個人の交渉の現場として読み取れます。

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参考文献・参考資料

※ 参考文献は順次追加・整理していきます。

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