ひとことで言うと
「障害のある人が他の人と同じように権利を行使できるように、その場にあった調整や工夫をすること」です。
定義
合理的配慮(reasonable accommodation)は、障害者権利条約第2条で次のように定義されます。「障害者が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」。
重要なポイントは、(1)個別性(その人・その場面に応じた調整)、(2)必要性と適切性(具体的なニーズに応える)、(3)過度の負担にならないこと(求める側・提供する側の対話を経て決定される)の三点です。合理的配慮は、定型化されたサービスではなく対話に基づく個別の調整として設計されています。
文脈と歴史
合理的配慮の概念は、1990年代のアメリカ障害者法(ADA, 1990)における雇用差別禁止条項に源流を持ち、2006年の障害者権利条約で国際的に体系化されました。日本では、同条約の批准(2014)に伴い、障害者差別解消法(2016年施行)と障害者雇用促進法(改正2016年施行)のなかで法的義務として組み込まれました。
当初、行政機関には合理的配慮の提供義務が課され、民間事業者には努力義務とされていましたが、改正障害者差別解消法(2024年4月施行)により、民間事業者にも法的義務が拡大されました。教育、雇用、医療、サービス提供など、社会のあらゆる場面で合理的配慮の提供が求められています。
主要な論点
1. 「対話」を前提とする概念
合理的配慮は、提供者が一方的に決めるものではなく、当事者と提供者の対話を通じて具体化されます。「何が必要か」「何ができるか」「どう調整するか」を、両者が建設的に話し合うプロセス自体が、合理的配慮の重要な構成要素です。
2. 「過度の負担」をめぐる解釈
過度の負担の判断は、事業の規模、財政状況、業務への影響、代替手段の有無などを総合して行われます。「過度の負担」を口実に配慮を提供しない運用にならないよう、ガイドラインや具体例の蓄積が求められています。
3. 発達障害・精神障害への適用
身体障害については合理的配慮の具体例(スロープ、点字、手話通訳など)が比較的明確ですが、発達障害・精神障害への合理的配慮は、目に見えない特性に応じた調整が求められるため、対話と工夫の余地が大きい領域です。学習・就労・公的手続きの場面で、実践事例の蓄積が進んでいます。
TSIRの研究との関わり
「発達障害に関するインタビュー(TABU)」プロジェクトでは、当事者・家族・支援者が、学校・職場・医療機関などの場面でどのように合理的配慮を求め、交渉し、得て、あるいは得られなかったかを聴き取っています。合理的配慮の制度はあっても、現場での運用は人とのやり取りに大きく依存しており、「制度と現場のあいだ」を語りから捉えることは、TSIRの重要な作業です。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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