ひとことで言うと
「近代になって作られた、夫婦と子どもからなる小さな家族のかたち」のことです。それは『昔からあるもの』ではなく『歴史のなかで作られたもの』だ、という点が重要です。
定義
近代家族(modern family)は、家族社会学者・落合恵美子(『近代家族とフェミニズム』1989など)の整理によれば、次のような特徴を持つ家族モデルです。(1)家族領域と公的領域の分離、(2)家族成員相互の強い情緒的関係、(3)子ども中心主義、(4)男は公的領域・女は家内領域という性別分業、(5)家族の集団性の強化(外部に対する閉鎖性)、(6)非親族の排除、(7)核家族、(8)家内領域でのプライバシー。
この家族モデルは、歴史を通じて常に存在したものではなく、近代社会の成立過程(産業革命、近代国家の形成、市民的公私分離)のなかで歴史的に成立した歴史的構築物として理解されます。
文脈と歴史
近代家族論は、フランスの歴史学者フィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生』(1960)、社会史研究の蓄積、フェミニズム理論などの影響を受けながら、1970〜80年代に体系化されました。日本では落合恵美子の研究が代表的で、戦後日本の「家族の戦後体制」を分析する枠組みとして広く参照されています。
1990年代以降、近代家族モデルは、少子化、女性の社会進出、未婚化、離婚、ひとり親世帯の増加、同性パートナーシップの可視化、ステップファミリーなどの現象によって揺らいできました。「ポスト近代家族」「家族の多様化」をめぐる議論は、近代家族論を出発点として展開しています。
主要な論点
1. 「自然」ではなく「歴史的構築物」
近代家族論の最大の貢献は、当たり前に思われている家族のかたちが「自然」ではなく「歴史的に作られたもの」であることを示した点にあります。この視点は、家族規範を相対化し、多様な家族のあり方を考える前提となります。
2. 性別役割分業との結びつき
近代家族モデルは、性別役割分業を基盤とします。男性の稼ぎ手役割と女性のケア役割は、近代家族のセットとして長く維持されてきました。フェミニズムは、この結びつきを批判的に検討してきた潮流です。
3. ポスト近代家族をめぐって
近代家族モデルが揺らぐなかで、何がそれに代わるのかは依然として開かれた問いです。個人化の進行、純粋関係性の浸透、ケア責任の社会化、家族多様化の制度的承認などが論点となっています。
TSIRの研究との関わり
「子どもを持つ理由・持たない理由」プロジェクトは、まさに「近代家族モデルが揺らぐ時代に、人はどのような根拠から子どもを持つ/持たないを決めているのか」という問いと深く重なります。聴き取られる語りは、戦後日本の標準的家族像との交渉のなかで作られていることが少なくありません。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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