はじめに

離婚と再婚を経て、新しい配偶者と、それぞれの連れ子と一緒に暮らす家族。 ステップファミリー、ブレンディッド・ファミリー──。 こうした家族のかたちは、いま、決して珍しいものではありません。

このタイプの家族を、社会学・家族社会学のことばで混合家族(mixed family)と呼びます。 家族の多様化が進むなかで、ますます重要になってきている概念です。

1. 混合家族とは何か

混合家族は、ひとことでいえば、

親の再婚などによって、再婚以前の夫婦関係での子どもたちがいっしょになる家族形態。

を指します(吉岡のノートより)。

英語では "blended family"(混ぜ合わされた家族)、"stepfamily"(継親家族)と呼ばれることが多い。 日本語の「混合家族」のほかに、「ステップファミリー」「再婚家族」「継家族」といった呼び方もされます。

2. なぜ混合家族が増えているか

混合家族が現代社会で増えてきた背景には、いくつかの大きな変化があります。

ひとつ目は、離婚率の上昇。 日本でも、近年、離婚は珍しいことではなくなりました。 そして、離婚を経験した人々が、新しいパートナーと再婚することも増えています。

ふたつ目は、晩婚化と再婚の組み合わせ。 若いうちに結婚しなくても、人生の途中で家族を作ることが選択肢として広がってきました。 パートナーがすでに子どもを持っているケースも、当たり前にあります。

三つ目は、家族の多様化への社会的受容。 「結婚して、子どもを産み、最後まで添い遂げる」という近代家族の規範が、絶対的なものではなくなってきた。 そのなかで、混合家族のような新しい形が、ふつうに見られるようになっています。

3. 混合家族が直面する独特の課題

混合家族は、初婚で家族を作る場合とは違う、いくつかの独特の課題に直面します。

ひとつ目は、子どもたちの背景の違い。 それまで異なった生活スタイル・規範のなかで育った子ども同士が、いっしょに暮らすことになる。 食事の習慣、勉強の仕方、生活リズム、家での会話のしかた──。 こうした「家ごとの当たり前」のズレが、日常のなかで何度も浮上してきます。

ふたつ目は、新しい親子関係の構築。 血縁関係のない親(継父・継母)と子どもが、新しい関係を作っていく必要がある。 「いつ、どこまで親として関わるか」「どこまで踏み込むか」のバランスは、簡単には決まりません。

三つ目は、新しいきょうだい関係の構築。 連れ子同士で「きょうだい」となる関係も、初めから自然に育つわけではありません。 取り合い、嫉妬、距離感、絆──さまざまな感情が、長い時間をかけて作られていきます。

四つ目は、子どもの発達への影響への配慮。 こうした移行期に、子どもたちの発達にどんな影響が及ぶか。 心理学・教育学・福祉の研究と組み合わせながら、慎重な対応が求められます。

4. 「壊れた家族」ではなく、「新しい家族」へ

混合家族は、しばしば「離婚した家族の再構成」として語られます。 ですが、社会学的には、「壊れた家族」ではなく「新しい家族」として捉え直すことが重要です。

近代家族の規範は、「初婚カップルが、子を持ち、一生添い遂げる」というモデルを基準にしています。 この基準で見ると、離婚や再婚は「逸脱」「失敗」と見えてしまう。

ですが、人生100年時代に、

混合家族は、これらの新しい人生のかたちのなかで、立派にひとつの家族の形態として機能しうるものです。

5. 制度の遅れ

ただし、社会の制度は、まだ混合家族のリアリティに追いついていない部分が多くあります。

これらは、家族のあり方が多様化しているなかで、制度設計が追いついていない部分です。 混合家族の増加は、これからの家族政策にとっても大きな課題になっていきます。

6. インタビュー研究と、混合家族

TSIR がインタビューを通して聴く語りのなかにも、混合家族の経験は、しばしば登場します。

これらの語りは、混合家族のなかで人々がどんな試行錯誤を重ねているかを、生き生きと教えてくれます。 「壊れた家族」というラベルではなく、「新しい家族を作っている人々」として聴くことが、社会学的にも、人としても、大切な姿勢だと思います。

7. 定位家族・生殖家族との関係

混合家族は、定位家族(生まれた家)と生殖家族(つくる家)(→ #39)のあいだに、また別のレイヤーを加えます。

子どもにとっては、

──というふうに、人生のなかでふたつの定位家族的な経験を持つことになります。 これは、本人のアイデンティティ形成に複雑な意味を持ち得ます。

社会学・心理学の研究は、こうした複層的な家族経験を、丁寧に観察し続けています。

結び

混合家族は、現代社会で増えつつある、新しい家族のかたちのひとつです。

「壊れた家族」と決めつけるのではなく、「新しい家族を作る試み」として受け止めること。 そして、その試みを、制度と文化の両面で支えていくこと。 これが、家族の多様化が進むこれからの社会に必要な姿勢だと、私は思っています。

参考資料

【執筆:吉岡詩織 / 編集:qbc(栗林康弘)】

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