ひとことで言うと
「ひとつの方法・ひとつの視点に頼らず、複数の角度から同じ対象に近づくことで、見え方の偏りを補正する」やり方のことです。
定義
トライアンギュレーション(triangulation)は、もともと測量・航海で用いられる三角測量の比喩に由来します。社会調査の文脈ではデンジン(Denzin, 1970)が体系化し、研究知見の妥当性を高めるための方法的戦略として位置づけました。
デンジンは四つのトライアンギュレーションを区別しました。(1)データ・トライアンギュレーション(時間・空間・人物の異なるデータ源)、(2)調査者トライアンギュレーション(複数の研究者の視点)、(3)理論トライアンギュレーション(複数の理論的枠組み)、(4)方法論的トライアンギュレーション(インタビュー+観察+文書など複数の方法)です。
文脈と歴史
トライアンギュレーションの考え方は、もともと量的研究と質的研究の「方法的厳密性」をめぐる議論のなかで提案されました。1970年代から80年代にかけて、質的研究の妥当性をどう確保するかが問われるなかで、複数の方法・データを照合する戦略が支持を集めました。
1990年代以降は、必ずしも「同じ結論に収束させる」のではなく、異なる方法から異なる側面が見えてくることを多面性として積極的に評価する立場(Flickなど)が広がりました。トライアンギュレーションは、検証手段から、対象の多面的理解の戦略へと発展してきています。
主要な論点
1. 収束モデルか多面モデルか
複数の方法から得られた結果が一致することを「妥当性の証拠」とみる収束モデルと、結果のずれをむしろ対象の複雑性として記述する多面モデルがあります。後者は質的研究との相性がよく、近年は主流的です。
2. 方法論的混合の実装
インタビュー、観察、文書、量的データなどをどの順序で・どの重みで組み合わせるかは、研究設計の重要な論点です。混合研究法(mixed methods research)は、トライアンギュレーションの考え方を体系化した研究設計論として発展してきました。
3. 「複数性」のコスト
トライアンギュレーションは方法的厳密性を高める一方、研究のコスト(時間・労力・専門性)も増加させます。何のためにトライアンギュレーションを行うのかという目的の明確化が、実装の鍵となります。
TSIRの研究との関わり
TSIRは、インタビューを中心に据えながら、文献調査・既存統計・公的データなどを組み合わせる方法論的トライアンギュレーションを意識しています。「子どもを持つ理由・持たない理由」では、個別の語りを聴くだけでなく、合計特殊出生率・有配偶出生率・国民生活基礎調査などのマクロ統計を参照することで、語りの位置づけを多角的に検討しています。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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