ひとことで言うと
「社会で起きていることを、思いつきや印象ではなく、決まった手順で調べていく」営みの総称です。アンケートや統計のような量的調査と、インタビューや観察のような質的調査の両方を含みます。
定義
社会調査とは、社会現象(人々の意識、行動、関係、制度のあり方など)について、あらかじめ設計された手続きに基づいてデータを収集し、整理・分析することによって、知見を生み出す研究活動を指します。
対象は個人・世帯・組織・地域・国などさまざまな単位に及び、方法も統計調査、質問紙調査、インタビュー、参与観察、文書分析、混合的方法など多様です。「社会調査」は特定の手法を指す言葉ではなく、これら多様な方法を含む研究実践の総称として使われます。
文脈と歴史
近代的な社会調査の起源は、19世紀の社会改良運動に求められます。チャールズ・ブースのロンドン貧民調査やシーボーム・ラウントリーのヨーク調査は、貧困を社会全体の問題として可視化する先駆的な調査として知られています。日本でも、戦前から農村調査・都市調査の蓄積があり、戦後は官庁統計、世論調査、大学の社会学的調査などが大規模に展開されました。
20世紀後半には、サンプリング理論や統計分析の精緻化に伴い量的調査が主流化する一方で、質的調査の方法論も体系化が進みました。今日では、量的・質的を機械的に対立させるのではなく、研究の問いに応じて適切な方法を選び・組み合わせる多様な実践の集合体として社会調査が捉えられています。
主要な論点
1. 量的調査と質的調査の関係
両者はしばしば対立的に語られますが、実際にはそれぞれが得意とする問いが異なります。量的調査は「どのくらいの人が/どの程度」を捉えるのに長け、質的調査は「なぜ・どのように・どのような意味で」を捉えるのに長けています。両者を組み合わせるミクスト・メソッズは、現代社会調査の重要な潮流のひとつです。
2. 倫理と個人情報の保護
社会調査は、人々の生活に踏み込んでデータを得る営みです。インフォームド・コンセント、匿名化、データの保管、撤回の権利、研究結果の公開のあり方など、調査倫理は研究設計の根幹に関わります。日本では「社会調査協会」などが倫理綱領を整備しています。
3. 調査困難・回収率低下
現代では、質問紙調査の回収率低下、対面調査の困難化、SNS時代の代表性確保の難しさといった課題が顕在化しています。これに対して、ウェブ調査、混合的サンプリング、行政データの二次利用など、新しい調査設計の試行錯誤が続いています。
4. 「調査」という営みの社会的責任
社会調査は、調べる側と調べられる側の非対称な関係性を内包しています。誰が、誰のために、何のために調査するのか、得られた知見をどう社会に返すのか──こうした調査者の社会的責任の問いは、技術論を超えて社会調査論の中心にあります。
TSIRの研究との関わり
TSIRのインタビュー研究は、社会調査の営みのなかでも質的調査の系譜に位置づけられますが、量的調査との接続も強く意識して設計されています。たとえば「子どもを持つ理由・持たない理由」では、98件のアンケート調査と少数のインタビューを組み合わせ、量と質のあいだに連続性を作る試みを行っています。
また、社会調査の倫理綱領を踏まえ、対象者へのインフォームド・コンセント、匿名化、撤回の権利、公開範囲の合意などを各プロジェクトで明示的に設計しています。社会調査は、技術であると同時に関係性の倫理でもあります。
関連する用語
参考文献・参考資料
- 盛山和夫『社会調査法入門』(有斐閣, 2004)
- 佐藤郁哉『フィールドワーク──書を持って街へ出よう』(新曜社, 2006)
- 森岡清志編『ガイドブック社会調査』(日本評論社, 2007)
- 原純輔・海野道郎『社会調査演習』(東京大学出版会, 2004)
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
質的研究法・インタビュー研究について、講演・執筆・取材のご依頼を承っています。