ひとことで言うと
「自分が研究することによって、研究の対象や結果がどう変わるか」を、研究者自身が意識的に振り返り続けることです。
定義
リフレクシビティは、社会学・人類学・心理学などの質的研究方法論で広く用いられる概念で、研究者が自らの属性・経験・価値観・関係性が研究にどのような影響を与えているかを継続的に省察し、それを研究の記述と分析に組み込む姿勢を指します。
ピエール・ブルデューは、研究者自身が学問世界のなかで占める位置や、研究対象に対して持つ前提を分析の対象に組み込む参与的客観化(participant objectivation)を提唱し、リフレクシビティ概念の社会学的展開に大きな影響を与えました。
文脈と歴史
20世紀後半以降、質的研究のなかで「研究者は中立的観察者ではない」という認識が定着するにつれ、リフレクシビティの重要性が高まってきました。フェミニスト研究、ポストコロニアル研究、オートエスノグラフィーなどの潮流は、研究者の身体・歴史・社会的位置が研究と切り離せないことを強調してきました。
現代の質的研究では、リフレクシビティは「研究のあとに付け足される反省」ではなく、研究設計・実施・分析・記述のすべてに織り込まれる継続的な実践として捉えられています。
主要な論点
1. 個人的リフレクシビティと方法論的リフレクシビティ
ウィルキンソンの整理に従えば、研究者個人の経歴や感情の影響を振り返る個人的リフレクシビティと、研究方法・理論枠組みそのものの妥当性を問い直す方法論的リフレクシビティに区別できます。両者を行き来することで、研究の透明性が高まります。
2. 「研究者の特権」と倫理
誰が、誰について、どのような立場から書くのか。研究者と対象者のあいだの権力関係を意識し、その非対称を踏まえた書き方・関わり方を選ぶことは、リフレクシビティの倫理的な側面です。
3. 過剰なリフレクシビティ批判
近年は、研究者の自己言及が肥大化し、対象者についての記述が後景に退いてしまう過剰なリフレクシビティへの批判もあります。リフレクシビティは目的ではなく、対象を理解するための方法的な構えであるという原則を見失わないことが重要です。
TSIRの研究との関わり
TSIRのインタビュー研究は、リフレクシビティを方法的な構えのひとつとして位置づけています。インタビュアー自身がどのような関心・経験・立場から問いを立て、対話を運んでいるかを継続的に振り返り、必要に応じて研究記述に組み込んでいきます。
特に「発達障害に関するインタビュー」プロジェクトでは、特別支援教育に長く携わってきたたぶ先生(堂林タブ)のフィールドワーカーとしての立ち位置と、研究者・聞き手としての立ち位置の関係を意識的に整理しながら、リフレクシブな研究設計を試みています。
関連する用語
参考文献・参考資料
- ピエール・ブルデュー『社会学者のメチエ』(藤原書店, 1994)
- ピエール・ブルデュー『科学の科学』(藤原書店, 2010)
- ウヴェ・フリック『新版 質的研究入門』(春秋社, 2011)
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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