ひとことで言うと
「人と人とのつながりや信頼そのものが、活動や生活を支える『資本』としてはたらく」という考え方のことです。
定義
社会関係資本(social capital)は、個人や集団が、社会的ネットワークを通じて利用できる、信頼・規範・つながりに基づくリソースを指します。物的資本(モノ)、人的資本(知識・技能)と並ぶ「資本」のひとつとして理論化されました。
主な定義の系譜は三つあります。(1)ブルデューは、個人が動員可能な人的ネットワークの総体として位置づけ、文化資本・経済資本との交換可能性を強調しました。(2)コールマンは、行為者の合理的選択を支える関係的資源として定義しました。(3)パットナムは、地域・国の市民的活力(信頼、参加、規範)として、マクロ社会のレベルで論じました。
文脈と歴史
社会関係資本の概念は、1980年代から急速に展開しました。ブルデュー(1986)が文化資本とともに簡潔に提示し、コールマン(1988)が社会学的に体系化、パットナム『哲学する民主主義』(1993)が地域比較研究で大きな注目を集めました。
その後、世界銀行などの国際機関、公衆衛生学(カワチ他)、地域政策、教育研究、防災研究などのなかで活発に応用されてきました。日本では、内閣府の「ソーシャル・キャピタル調査」(2003)以降、地域コミュニティ研究・福祉政策論で広く参照されています。
主要な論点
1. 結合型と橋渡し型
パットナムは、結合型(bonding)(同質的な集団内の強い絆)と橋渡し型(bridging)(異質な集団をつなぐ弱い絆)を区別しました。結合型は集団内の協力に効くが排他性を生みやすく、橋渡し型は社会全体の包摂性を高めると考えられます。
2. 「資本」のメタファーの限界
つながりや信頼を「資本」として捉えることには、市場経済の論理を社会関係に持ち込むという批判があります。互酬性、贈与、ケアといった営みを資本概念で整理しきれるかは、依然として論争があります。
3. 健康・幸福との関係
社会関係資本は、健康指標や主観的幸福感とも関係することが、多くの実証研究で示されています。孤立は健康リスクであり、つながりは公衆衛生上の資源として再評価されつつあります。
TSIRの研究との関わり
「仕事・育児をしながら創作をする理由」では、語り手が創作活動を続けるうえで、家族・友人・オンラインコミュニティ・ファンとのつながりがどのような資源として機能しているかを聴き取っています。「発達障害に関するインタビュー(TABU)」でも、当事者・家族・支援者を支える社会関係資本の有無は、生活の質に大きな影響を与える要素として浮かび上がります。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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