ひとことで言うと
「外的な必要性ではなく、お互いがその関係から得る満足だけを根拠にして続けられる関係」のことです。
定義
純粋関係性(pure relationship)は、ギデンズ(1992)によれば、「関係そのものから得られる満足のためにのみ維持される、外的根拠を持たない関係」を指します。家業継承、親族の義務、宗教的な絆、経済的な必要性などといった「外側の根拠」なしに、関係そのものの内的な質だけを根拠に続く関係です。
この関係は、当事者の自由な選択と持続的な相互交渉によって成り立ちます。離れることもいつでも可能であり、それゆえに不断のメンテナンスが要求されます。「親密性の民主化」とも呼ばれ、対等な関係性の理想が含意されますが、不安定性も併せ持っています。
文脈と歴史
ギデンズは、近代化のなかで親密関係が伝統的な制度の縛りから自由になっていく過程を「再帰的プロジェクト」として描きました。結婚は宗教的・経済的な制度から、当事者間のロマンス・自己実現の場へと意味を変えました。離婚率の上昇、同棲、事実婚、同性関係の可視化なども、この移行の一部とみなされます。
純粋関係性論は、ベックの個人化論や、バウマンの「リキッド・ラブ」論とも通底し、後期近代の親密性を論じる中核的枠組みのひとつとなっています。日本では、家族社会学・若者論・ジェンダー研究のなかで広く参照されています。
主要な論点
1. 自由と不安定さ
純粋関係性は、当事者の自由意志と平等性を高める一方で、関係を維持するためには絶えざるコミュニケーションと交渉が必要となります。「いつでも終われる」からこそ、関係は不安定化しやすいという両義性があります。
2. 制度との関係
純粋関係性は、制度(婚姻法・福祉政策・家族規範)から完全に切り離されるわけではありません。むしろ制度との関係でどこまで「純粋」なのかが、現代の親密性論の論点です。同性婚や事実婚の制度化は、この問いに直結しています。
3. ケアとの関係
純粋関係性論は、ケアや育児の不対称性を十分に扱えていないとの批判もあります。子どもや要介護者を含むケア関係は、「関係そのものの満足」だけで成り立つとは言えません。フェミニスト社会学からのこの批判は重要な論点です。
TSIRの研究との関わり
「子どもを持つ理由・持たない理由」プロジェクトは、結婚・パートナーシップ・子どもを持つことの意味が、伝統的な家族規範から切り離されつつある現代日本の状況を背景としています。純粋関係性と制度的家族の緊張、ケア責任の引き受け方は、語りのなかに繰り返し現れる主題です。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
質的研究法・インタビュー研究について、講演・執筆・取材のご依頼を承っています。