ひとことで言うと
夫婦どちらも働いていて、子どもを持たない(あるいは持たない選択をしている)家族のかたちを指す言葉です。
定義
DINKsは、Double Income No Kids(あるいは Dual Income, No Kids)の頭文字をとった呼称で、共働きで子どもを持たないカップルを指します。1980年代後半のアメリカでマーケティング・ジャーナリズムから広まった用語で、家族社会学の専門用語というよりは現象記述的なラベルとして用いられてきました。
DINKsには、選択的に子どもを持たないカップル(child-free)と、結果的に子どもを持っていないカップル(childless)の両方が含まれることが多く、両者の動機・経験は質的に異なるため、研究上はしばしば区別されます。
文脈と歴史
1980年代以降の先進国では、結婚と出産の結びつきが緩やかになり、結婚しても子どもを持たない選択や、結果としてそうなるケースが増えてきました。日本でも、晩婚化・初婚年齢の上昇・出生率の低下といった人口学的変化を背景に、DINKsはひとつの家族モデルとして可視化されてきました。
近年は、子どもを持たないことが「選択」なのか「結果」なのかを区別する重要性が指摘されており、選択的に子どもを持たない人々(child-free)の語りや経験を独自に取り上げる研究も増えています。
主要な論点
1. 選択と結果のあいだ
「子どもを持たない」状態は、確固たる意思決定の結果である場合もあれば、健康・経済・関係性・タイミングなど複数の要因が重なった結果である場合もあります。両者を一括りにDINKsと呼ぶことは、多様な経験を平準化する危険を伴います。
2. ライフコースと変化
DINKs状態は人生の一時期に過ぎないこともあります。一時的に子どもを持たない期間、最終的に子どもを持たない選択、後に子どもを持つに至るケースなど、時間的変化を捉える視点が必要です。
3. 社会的視線と自己認識
「子どものいない夫婦」に対する社会的視線(質問・無理解・憐憫・批判など)は、当事者の自己認識と密接に関わります。DINKsという呼称は、当事者にとって自己を肯定する道具にも、また外部からのラベリングにもなりえます。
TSIRの研究との関わり
TSIRの「子どもを持つ理由・持たない理由」プロジェクトは、子どもを持たない選択あるいは状態にある人々の語りを丁寧に聞き取ることを目指しています。DINKsという呼称は、その分類のひとつとして用いつつも、選択/結果/変化のいずれの位相にあるかを区別しながら聞き取ることを重視しています。
また、子どもを持たない状態が「選択」と単純化されることで隠されてしまう、健康・経済・関係性・タイミングなど多層的な経験を、語りのなかから取り出していくことが、本プロジェクトの中心的な関心です。
関連する用語
参考文献・参考資料
- 落合恵美子『21世紀家族へ(第4版)』(有斐閣, 2019)
- 国立社会保障・人口問題研究所『出生動向基本調査』各回
- 森岡清美・望月嵩『新しい家族社会学(四訂版)』(培風館, 1997)
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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