用語分類:家族社会学 監修:吉岡詩織 最終更新:2026-05-09
戦後日本において、夫が稼ぎ・妻が家事育児を担うという性別役割分業と、核家族を中心に標準化された家族のかたちを指します。雇用慣行、社会保障、住宅政策、教育文化と相互に支え合いながら一定期間にわたって標準モデルとして機能してきましたが、20世紀末以降に大きく揺らいでいます。

ひとことで言うと

「夫が外で働き、妻が家を守り、子どもを2人くらい育てる核家族」というイメージで、戦後の日本社会で「ふつうの家族」として広まった形のことです。

定義

戦後家族は、近代家族の一形態で、戦後日本の高度経済成長期を通じて社会的な標準モデルとして広まった家族像を指します。性別役割分業、夫婦と子からなる核家族、長期雇用に支えられた男性稼ぎ手、専業主婦または家計補助的なパート労働を担う女性、といった要素の組み合わせを特徴とします。

文脈と歴史

戦後日本の社会保障、税制、雇用慣行、住宅政策などの制度設計が、この家族像を前提として組み立てられてきたと指摘されます。20世紀末以降、共働きの一般化、未婚化・晩婚化、雇用の不安定化、女性の社会参加の拡大、家族の多様化などにより、戦後家族モデルは大きく揺らぎ、制度との齟齬が顕在化しました。

主要な論点

1. 制度との結びつき

戦後家族は、配偶者控除、被扶養者の社会保険、企業の家族手当など、税・社会保障・雇用制度と密接に絡み合っていました。これらの制度は今も部分的に残っており、家族の多様化との齟齬を生んでいます。

2. ジェンダー秩序の再生産

戦後家族のモデルは、性別役割分業と男性稼ぎ手モデルを規範化し、女性の経済的自立や男性のケア参加を妨げる構造的要因として批判されてきました。

3. 多様化との緊張

未婚化、共働き、ひとり親、ステップファミリー、同性カップルなど、家族のかたちが多様化するにつれて、戦後家族モデルを基準にした制度や規範が、現実から離れていく緊張が生じています。

4. 世代差

戦後家族の規範を内面化した世代と、それを当然視できなくなった世代との間で、家族をめぐる価値観の世代差が広がっています。これは家族研究の継続的なテーマです。

TSIRの研究との関わり

TSIRが扱う「子どもを持つ/持たない選択」「育児と仕事と創作の両立」は、戦後家族モデルが揺らぎつつも残存し続ける現代日本社会のなかで、人々がどのように生き方を選んでいるかを問うテーマです。プロジェクト「子どもを持つ理由・持たない理由」では、戦後家族モデルへの距離感が、語り手ごとに大きく異なる様子が見えてきます。

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参考文献・参考資料

※ 参考文献は順次追加・整理していきます。

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