ひとことで言うと
「家族」は親しさや親族関係に基づく集まりのこと、「世帯」は同じ家に住んで家計を共にする人の集まりのことで、両者は重なる部分もあれば、ずれる部分もあります。
定義
家族は、夫婦・親子・兄弟姉妹といった親族的・情緒的な紐帯に基づく社会的単位を指します。一般に長い時間軸を持ち、共住していない成員も含みうる柔軟な範囲を持ちます。
世帯は、住居および生計をともにする人々の集まりとして定義される統計上の単位です。日本の国勢調査における世帯定義は「住居及び生計を共にしている人の集まり、又は一戸を構えて住んでいる単身者」とされており、必ずしも家族構成と一致しません。
文脈と歴史
戦後日本では、農村型の拡大家族から、都市型の核家族へという家族形態の変化が大きく語られてきました。同時に、世帯規模の縮小、単身世帯の増加、ひとり親世帯の増加など、世帯を単位とした人口動向の変化も顕著になっています。
「家族/世帯」の区別を意識することは、たとえば離れて暮らす親子、事実婚、シェアハウス、ひとり親世帯など、家族と世帯がずれる現象を捉えるうえで重要です。両者を一致するものと前提することは、現代の多様な生活実態を見落とすことにつながりかねません。
主要な論点
1. 家族の境界をどう引くか
「家族とは何か」という定義は、文化・歴史・法制度によって大きく異なります。戸籍上の家族、心理的な家族、生活上の家族はそれぞれ範囲が異なり、当事者にとって「自分の家族」とは何かは状況的に決まる側面もあります。
2. 世帯統計の限界
公的統計は世帯を単位として集計されることが多いため、同居しない家族関係や世帯内の関係の質は捉えづらくなります。たとえば単身世帯のなかには、強い家族関係を持つ人もいれば、孤立した人もいます。世帯統計は「人口の動き」を把握する強力な道具ですが、生活の手触りを直接示すものではありません。
3. 多様化する生活単位
事実婚、別居婚、ステップファミリー、ひとり親世帯、シェアハウス、同性カップルなど、現代の生活単位は多様です。家族と世帯という基本概念だけでは捉えきれない関係の質を、新しい言葉や枠組みで読み解いていく作業が続いています。
TSIRの研究との関わり
TSIRが進めている「子どもを持つ理由・持たない理由」プロジェクトでは、対象者が「自分の家族」をどのように認識しているか、「世帯」をどのように構成しているかという、家族と世帯の認識のずれを丁寧に聞き取る設計をとっています。
また、出産・子育てをめぐる選択は、世帯構成の変化と家族関係の質の変化の両方に関わるため、両概念を区別しながら語りを読み解いていくことが、分析上の重要な視点となります。
関連する用語
参考文献・参考資料
- 森岡清美・望月嵩『新しい家族社会学(四訂版)』(培風館, 1997)
- 落合恵美子『21世紀家族へ(第4版)』(有斐閣, 2019)
- 国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計』各年版
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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