用語分類:研究方法論 監修:吉岡詩織 最終更新:2026-05-09
研究者が作成した分析結果や記述を、語り手本人に確認してもらい、解釈のずれや誤りを修正していく手続きです。質的研究における信頼性・妥当性を高める方法のひとつとして提案されており、倫理的にも、語り手の声を尊重するための重要な実践とされます。

ひとことで言うと

研究者の解釈を、「あなたの語りについて、こう書こうと思います」と本人に戻して、確認してもらうやりかたです。誤読を減らすと同時に、研究者と語り手の関係性を整える役割があります。

定義

メンバー・チェッキング(member checking)は、質的研究における信用性確保の方法のひとつで、研究者が逐語録、要約、分析結果、原稿などを参加者本人に提示し、内容の正確性や納得感について意見を得る手続きを指します。「参加者検証(participant validation)」とも呼ばれます。

文脈と歴史

20世紀後半以降、質的研究の信頼性・妥当性をめぐる議論のなかで、量的研究とは異なる評価基準が模索されました。そのなかで、研究者の解釈を一方的なものにせず、当事者と対話しながら確かめていく姿勢の重要性が強調されるようになります。メンバー・チェッキングは、その代表的な手続きとして広く参照されてきました。

主要な論点

1. 確認の目的

事実の誤りを直すための確認なのか、それとも解釈の妥当性を問うための対話なのかによって、メンバー・チェッキングの位置づけは変わります。研究者は、何を確認してもらいたいのかを明示する必要があります。

2. 意見の不一致

研究者の分析と参加者の見方が異なる場合、どちらが正しいかという二者択一ではなく、その差異自体を重要なデータとして扱うべきだという議論があります。確認は単なる「お墨付き」ではありません。

3. 参加者の負担

原稿を読み、コメントを返す作業は、参加者にとって時間的・心理的負担を伴います。負担に見合う配慮、わかりやすい提示、撤回の権利の保証などが必要です。

4. 限界

メンバー・チェッキングは万能の妥当性検証ではありません。語り手が研究の文脈や用語に十分なじんでいない場合、確認の機会自体が形式的になる可能性があります。

TSIRの研究との関わり

TSIRがウェブ上で公開しているインタビューサマリーや記事は、原則として、語り手本人に確認していただいたうえで掲載しています。これは、メンバー・チェッキングの実践そのものであり、語り手と研究者の関係を尊重する姿勢の核に位置づけられます。

プロジェクト「子どもを持つ理由・持たない理由」では、テーマの繊細さもあり、確認のステップを丁寧に重ねることを設計の前提としています。

関連する用語

参考文献・参考資料

※ 参考文献は順次追加・整理していきます。

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