用語分類:家族社会学 監修:吉岡詩織 最終更新:2026-05-09
家族・友人・恋人など、近しい他者との情緒的・身体的な関わりが営まれる生活の領域を指す概念です。公共圏との対比で論じられることが多く、近代社会において親密圏に何がどのように位置づけられてきたか、そこに伴う規範や排除をどう考えるかが問われてきました。

ひとことで言うと

「家のなか」「親しい間柄」のように、近しい他者と関わる場のことです。公共の場と切り離して描かれがちですが、その境界自体が社会的に作られています。

定義

親密圏は、家族・友人・パートナーなど、互いに固有名で呼び合うような近しい関係の領域を指します。近代社会では、職場や政治といった公共の領域と区別され、感情・ケア・性愛が営まれる場として位置づけられてきました。

文脈と歴史

20世紀後半以降のフェミニズム理論や家族社会学が、公私二元論を批判するなかで、親密圏の概念は重要性を増しました。家族の枠を越えて、友人ネットワーク、ケアの輪、共生の単位など、より広い親密性の場を捉える枠組みとして展開しています。

主要な論点

1. 公私の関係

親密圏と公共圏は対立的に描かれがちですが、両者は法・制度・経済を介して深く絡み合っています。「個人的なことは政治的である」というフェミニズムの命題は、この絡まりを言葉にしたものです。

2. ケアの場

親密圏は、ケアが日常的に交わされる場でもあります。ケアの不可視化や偏った負担は、親密圏が「自然」とされることと結びついて生じがちです。

3. 排除と包摂

誰がどのような関係を親密圏に含めることができるか——血縁・婚姻・性的指向などをめぐる制度的境界が、親密圏の包摂と排除を決めています。

4. 現代的拡張

選択された家族、友人ネットワーク、シェアハウス、オンライン上の親密な関係など、親密圏の形は多様化しています。現代の研究は、こうした拡張を捉えるための概念を更新し続けています。

TSIRの研究との関わり

TSIRが扱うテーマは、親密圏の編まれかたを問う領域そのものです。プロジェクト「子どもを持つ理由・持たない理由」では、語り手ひとりひとりが、どのような親密な関係を編みながら生きているか、それがどのように選択に関わっているかを聞き取っています。

関連する用語

参考文献・参考資料

※ 参考文献は順次追加・整理していきます。

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