ひとことで言うと
「公の場」と「家のこと」を別々の領域として切り分ける見方を、そのまま受け取ってしまうことの問題を考える概念です。
定義
公私二元論は、社会を公的領域(市場・政治・職業)と私的領域(家庭・親密圏)に分けて理解する図式を指します。フェミニズム理論はこの分割が、しばしば男性を公的領域、女性を私的領域に配置する規範と結びついていることを批判してきました。
文脈と歴史
近代社会の成立とともに公私の分離が強化され、家庭がプライベートな領域として描かれるようになりました。20世紀後半以降のフェミニズム理論は、「個人的なことは政治的である」という主張を通じて、公私の境界そのものを問題化しました。
主要な論点
1. ケア労働の不可視化
家庭内のケア労働が「私的」な営みとして位置づけられることで、その経済的・社会的価値が不可視化されてきました。公私二元論は、この不可視化の重要な背景です。
2. 政治の境界
暴力・差別・支配が「家庭内のこと」とされることで、公的な対応が遅れる問題があります。家庭内暴力、児童虐待、ハラスメントへの対応は、公私の線引きを問い直す具体的な場面です。
3. 再分配と承認
公私二元論を超えて、社会全体の正義を考えるためには、ケアの再分配や承認の制度をどう設計するかが重要な論点となります。
4. 現代の揺らぎ
テレワーク、SNS、オンライン上の自己呈示など、公私の境界自体がさらに揺らいでいます。新しい技術環境のもとでの公私のあり方が問い直されています。
TSIRの研究との関わり
TSIRが扱う育児・家事・仕事のテーマは、公私二元論が機能しつづける現実のなかで人々の選択を聞き取る作業です。プロジェクト「仕事・育児をしながら創作をする理由」では、創作という個人的な営みが、家事・育児・仕事という他の領域とどのように絡み合うかが、繰り返し語られます。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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