用語分類:哲学・社会理論 監修:吉岡詩織 最終更新:2026-05-09
テクストや人間の行為を、その文脈との往復のなかで理解しようとする思想と方法論の伝統です。古くは聖典の解釈に起源を持ち、近代以降は人文社会科学全般の方法的基盤として展開されました。質的研究や社会理論にも深い影響を与えており、「理解」とは何かを問う際の出発点となります。

ひとことで言うと

テクストや出来事を、その背景や文脈と行ったり来たりしながら、意味を読み解いていく作業の理論です。「理解する」とはどういうことかを考える伝統でもあります。

定義

解釈学(hermeneutics)は、テクスト・行為・出来事の意味を、それが置かれた歴史的・文化的・状況的文脈と関係づけながら理解する方法と、その理解の構造を反省する哲学を指します。「全体と部分の往復」「先入見と理解の関係」などが、解釈学の中心的主題です。

文脈と歴史

古代から聖典解釈の技法として発展し、19世紀以降は人文学一般の方法論として体系化されました。20世紀のハイデガー、ガダマー、リクールらの仕事を通じて、認識論的・存在論的な深みを持つ哲学的立場へと展開しています。社会学では、ヴェーバーの理解社会学とも結びつきつつ、質的研究の理論的基盤の一部をなしています。

主要な論点

1. 解釈学的循環

全体を理解するには部分の理解が必要であり、部分を理解するには全体の理解が必要、という循環を、解釈学はネガティブにではなく、理解の構造そのものとして引き受けます。

2. 先入見と地平

理解は、まったくの白紙からは始まりません。読み手が持つ「地平」と、テクストの「地平」が出会い、融合する過程として理解が捉えられます。

3. 対話としての理解

理解は一方的な読み取りではなく、テクストや他者との対話的なプロセスです。問いを発し、応答を受け、問いを修正していく動きが、理解の本質に位置づけられます。

4. 社会科学への影響

解釈学は、社会現象を「説明する」だけでなく「理解する」ための方法論として、社会学・人類学・看護学などに継承されています。質的研究の哲学的背景としても重要です。

TSIRの研究との関わり

TSIRがインタビューを通じて語りを聞き、それを記録に残す作業は、それ自体が解釈の連鎖です。語り手の経験を、語り手・聞き手・読み手のそれぞれの地平のあいだで読み直していく姿勢は、解釈学的な伝統と深く響き合います。プロジェクト「子どもを持つ理由・持たない理由」のサマリーは、こうした解釈の往復のなかで形を取っています。

関連する用語

参考文献・参考資料

※ 参考文献は順次追加・整理していきます。

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