ひとことで言うと
テクストや出来事を、その背景や文脈と行ったり来たりしながら、意味を読み解いていく作業の理論です。「理解する」とはどういうことかを考える伝統でもあります。
定義
解釈学(hermeneutics)は、テクスト・行為・出来事の意味を、それが置かれた歴史的・文化的・状況的文脈と関係づけながら理解する方法と、その理解の構造を反省する哲学を指します。「全体と部分の往復」「先入見と理解の関係」などが、解釈学の中心的主題です。
文脈と歴史
古代から聖典解釈の技法として発展し、19世紀以降は人文学一般の方法論として体系化されました。20世紀のハイデガー、ガダマー、リクールらの仕事を通じて、認識論的・存在論的な深みを持つ哲学的立場へと展開しています。社会学では、ヴェーバーの理解社会学とも結びつきつつ、質的研究の理論的基盤の一部をなしています。
主要な論点
1. 解釈学的循環
全体を理解するには部分の理解が必要であり、部分を理解するには全体の理解が必要、という循環を、解釈学はネガティブにではなく、理解の構造そのものとして引き受けます。
2. 先入見と地平
理解は、まったくの白紙からは始まりません。読み手が持つ「地平」と、テクストの「地平」が出会い、融合する過程として理解が捉えられます。
3. 対話としての理解
理解は一方的な読み取りではなく、テクストや他者との対話的なプロセスです。問いを発し、応答を受け、問いを修正していく動きが、理解の本質に位置づけられます。
4. 社会科学への影響
解釈学は、社会現象を「説明する」だけでなく「理解する」ための方法論として、社会学・人類学・看護学などに継承されています。質的研究の哲学的背景としても重要です。
TSIRの研究との関わり
TSIRがインタビューを通じて語りを聞き、それを記録に残す作業は、それ自体が解釈の連鎖です。語り手の経験を、語り手・聞き手・読み手のそれぞれの地平のあいだで読み直していく姿勢は、解釈学的な伝統と深く響き合います。プロジェクト「子どもを持つ理由・持たない理由」のサマリーは、こうした解釈の往復のなかで形を取っています。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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