用語分類:社会理論 監修:吉岡詩織 最終更新:2026-05-09
社会学者フェルディナント・テンニースが提示した、人間関係の二つの理念型を表す対概念です。ゲマインシャフトは家族・近隣・友人のような全人格的・情緒的な結びつきを、ゲゼルシャフトは利害や目的に基づく契約的・分業的な結びつきを指します。近代社会の変化を語る基本概念のひとつとして広く参照されてきました。

ひとことで言うと

「血や心でつながる関係」と「目的や契約でつながる関係」を、ふたつの典型として区別する見方です。現実の関係はそのあいだのどこかにあります。

定義

ゲマインシャフト(Gemeinschaft)は、家族・親族・地縁集団のように、所属そのものに価値が置かれる全人格的・情緒的な結びつきを指します。ゲゼルシャフト(Gesellschaft)は、企業・市場・行政のように、目的や利害を媒介とする契約的・部分的な結びつきを指します。

文脈と歴史

19世紀末に提示された対概念で、近代化に伴う人間関係の変化を整理する枠組みとして、その後の社会学に大きな影響を与えました。デュルケムの機械的連帯・有機的連帯論や、近代家族論、コミュニティ論などとも対話を続けています。

主要な論点

1. 対概念の理念型性

現実の関係はどちらか一方ではなく、両者の要素を併せ持つことがほとんどです。対概念は、現実を分類するためではなく、その現実の特徴を比較するための物差しとして使われます。

2. 近代化と関係の変容

近代化に伴って、ゲゼルシャフト的関係が広がり、ゲマインシャフト的関係が後退する、という単純な図式は批判されてきました。近代社会の中にも、新しい形のゲマインシャフトが生まれ続けていることが指摘されています。

3. 家族と市場の関係

家族や親密圏が、市場や行政との関係でどのように位置づけられるかは、現在も議論が続くテーマです。ケアや感情労働をめぐる議論は、この対概念と切り離せません。

4. 現代の含意

SNS上のつながりや、地域コミュニティの再構築、職場での非公式なつながりなど、現代的な現象を読み解く際にも、この対概念は依然として参照されます。

TSIRの研究との関わり

TSIRが扱う「家族」「育児」「親密な関係」は、ゲマインシャフト的な側面と、契約・効率といったゲゼルシャフト的な側面が同時に絡み合う領域です。プロジェクト「子どもを持つ理由・持たない理由」では、語り手が自分の関係をどう位置づけているかを読み解く際、この対概念が背景の地図として役立ちます。

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参考文献・参考資料

※ 参考文献は順次追加・整理していきます。

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