ひとことで言うと
夫婦と子どもだけでなく、祖父母やきょうだいなどの親族を含む家族のあり方のことです。同居しているケースも、近くに住んでサポートし合うケースも含まれます。
定義
拡大家族は、核家族(nuclear family:夫婦と未婚子)を基準として、それに世代を超えた親族や傍系の親族が加わった家族形態を指します。3世代同居の直系家族は典型的な拡大家族の例です。
厳密には、拡大家族には同居を要件とする狭義の定義と、同居を要件としない広義の定義があります。後者では、近距離に住む親族間の機能的拡大家族も拡大家族の一形態として扱われます。
文脈と歴史
近代家族論では、産業化・都市化に伴って拡大家族から核家族への移行が進んだという「核家族化」のテーゼが広く受け入れられてきました。しかし、その後の歴史人口学的研究は、近代以前のヨーロッパや日本の家族構成は必ずしも拡大家族中心ではなかったことを示しており、近代化と家族形態の関係はより複雑に捉え直されています。
現代日本では、3世代同居率の長期的低下が観察されつつも、親世代と子世代の近居や頻繁な往来といった機能的な拡大家族の側面は依然として残っています。「同居していないが家族としての結びつきは強い」関係性は、世帯統計だけでは捉えきれない家族のかたちを示します。
主要な論点
1. 核家族化テーゼの再検討
歴史人口学(ピーター・ラスレットら)は、近代以前のヨーロッパで核家族世帯が広く存在していたことを実証し、「拡大家族から核家族へ」という単純な近代化図式を相対化しました。日本でも近世以来の家族形態は地域差が大きく、拡大家族と核家族の関係は時代・地域に応じて多様です。
2. ケアの担い手としての拡大家族
高齢期のケア、子育て期のサポート、共働き世帯の家事分担など、現代社会では拡大家族が非同居のままケアの担い手として機能する場面が多くあります。「家族のかたち」を世帯ではなくケアのネットワークから捉える視点が、現代の家族研究に求められています。
3. 拡大家族の選択性
親族関係はかつて所与の関係として扱われがちでしたが、現代では関係を続けるか・距離を置くかが個々の判断にも委ねられる側面が強まっています。拡大家族関係の選択性は、個人化の進展と関連する重要な論点です。
TSIRの研究との関わり
TSIRの「子どもを持つ理由・持たない理由」インタビューでは、出産・子育てをめぐる選択が、本人と配偶者の関係だけでなく、親世代やきょうだいとの関係のなかにも位置づけられている様子が、繰り返し語りに現れます。
「親に頼れるか」「親をケアする立場にあるか」「きょうだいの動向はどうか」など、拡大家族のネットワークの状態は、現代の若年・中年世代の生活設計に大きな影響を与えています。拡大家族の概念は、こうした語りを社会学的に読み解くうえでの基本的な枠組みのひとつです。
関連する用語
参考文献・参考資料
- 森岡清美・望月嵩『新しい家族社会学(四訂版)』(培風館, 1997)
- 落合恵美子『21世紀家族へ(第4版)』(有斐閣, 2019)
- ピーター・ラスレット『ヨーロッパの伝統的家族と社会』(岩波書店, 1986)
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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