ひとことで言うと
「インタビューの記録に、内容を要約する短いラベルをつけて、意味のまとまりを整理していく作業」のことです。
定義
コーディング(coding)は、質的データのテクストを意味のまとまりごとに切り出し、それぞれに簡潔なコードを付与する作業のことです。コードはテクストを抽象化した短い表現で、似た内容を持つ箇所を横断的に集めるための「索引」のように機能します。
コーディングは段階的に進められます。一般的には、テクストに密着したオープン・コーディングから始まり、コード間の関係を整理する軸足コーディング、理論的なまとまりを探る選択的コーディングへと進む、というのがグラウンデッド・セオリー・アプローチでの標準的な流れです。
文脈と歴史
コーディングという発想は、20世紀の量的内容分析(content analysis)にすでに見られましたが、質的研究の文脈で精緻化したのは、グレイザーとストラウス『データ対話型理論の発見』(1967)以降のグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。GTAは、データに密着しながら理論を生成するための具体的手続きとしてコーディングを位置づけました。
その後、シャーマズの構築主義的GTA、テーマ分析(Braun & Clarke)、質的内容分析(Mayring)、ナラティブ分析、会話分析など、さまざまな潮流のなかで独自のコーディング技法が発展しました。NVivo、MAXQDA、ATLAS.ti などの質的データ分析ソフトウェアの普及も、コーディング作業の標準化を促しました。
主要な論点
1. 「データに沿う」と「概念で読み込む」
コーディングには、テクストの言葉に近い「インヴィヴォ・コード」と、研究者が抽象的にまとめた「概念コード」の両方があります。前者は当事者の語彙を尊重するのに長け、後者は理論的な整理に向きます。両者を行き来することが、深い分析の鍵となります。
2. コーディングは解釈である
コーディングは「機械的な分類」ではなく、研究者の関心・理論的視点・経験が織り込まれた解釈の実践です。同じテクストでも、研究者の関心に応じてコードは異なります。リフレクシビティの観点からは、自らのコーディングがどのような立場から行われているかを記述することが求められます。
3. 複数人で行うコーディング
複数人でコーディングを行う場合、コード一覧の共有、合議によるすり合わせ、信頼性指標(コーダー間一致率)の検討などが行われます。厳密な一致率を求める研究と、解釈の多様性を価値として残す研究では、運用のスタイルが異なります。
TSIRの研究との関わり
TSIRのインタビュー研究では、逐語録に対してテーマ分析的なコーディングを段階的に行っています。「子どもを持つ理由・持たない理由」では、語り手ごとの個別性を尊重しつつ、共通する経験パターンや決断のメカニズムをコードとして抽出する作業が、研究の中核となります。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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