ひとことで言うと
「事前に決めた質問リストに頼らず、対話のなかから問いも話題も生まれてくる」聴き方のことです。
定義
非構造化インタビュー(unstructured interview)は、大まかな関心領域だけを準備し、質問の文言・順序・深さは対話の流れに委ねる面接形式です。「自由面接」「探索的面接」「深層面接(depth interview)」と呼ばれることもあります。
語り手が語りたいテーマ・順序・深さを尊重するため、調査者の事前の枠組みでは捉えきれない経験や意味が浮かび上がりやすい技法です。一方で、得られたデータの比較・統合は容易ではなく、分析者の解釈力が大きく問われます。
文脈と歴史
非構造化インタビューの起源は、文化人類学のフィールドワークと、20世紀前半の臨床心理学・精神分析的面接(フロイト、ロジャースのクライエント中心療法)に求められます。1960〜70年代以降、現象学的社会学、ナラティブ・アプローチ、女性学的研究のなかで、当事者の語りに寄り添う面接技法として理論的に整理されてきました。
日本では、生活史研究、ライフヒストリー法、ライフストーリー法などのなかで、非構造化的な聴き取りが方法的に位置づけ直されてきました。「無名人インタビュー」のような生活者の語りに耳を傾ける実践も、その系譜のなかで理解できます。
主要な論点
1. 自由度と深さ
非構造化インタビューの最大の利点は、事前の枠組みでは予期できない経験に触れられることです。語り手の連想、比喩、沈黙、脱線が、しばしば研究の核心へのとっかかりになります。
2. 分析の難しさ
自由な語りは構造化が低いぶん、得られたテクストを体系的に分析する作業に時間を要します。コーディング、テーマ分析、ナラティブ分析など、複数の分析技法を組み合わせて初めて知見として整理できる場合が多くあります。
3. 聴き手の役割
質問を「決めない」とはいえ、何も準備せずに臨むわけではありません。研究関心、関連文献、対象者の背景情報を踏まえたうえで、「聴く構え」を整えておくことが、非構造化インタビューを成立させる前提になります。
TSIRの研究との関わり
TSIRが連携している「無名人インタビュー」の聴き取りスタイルは、非構造化インタビューに近い性格を持ちます。「仕事・育児をしながら創作をする理由」のような問いは、定型的な質問では捉えきれない、語り手それぞれの動機・経緯・葛藤に触れる必要があります。研究上は半構造化のフレームを併用しつつ、語り手が語りたいテーマに開かれた聴き方を心がけています。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
質的研究法・インタビュー研究について、講演・執筆・取材のご依頼を承っています。