用語分類:ジェンダー研究 監修:吉岡詩織 最終更新:2026-05-09
個別の関係や場面だけでなく、社会全体に広がるジェンダーをめぐる権力配置と制度的構造を捉える概念です。R・W・コンネルらの議論を背景に、家庭・労働・政治・文化など各領域の関係を「ひとつの秩序」として読み解くための枠組みとして用いられてきました。

ひとことで言うと

「あの場面ではこう、この場面ではこう」とバラバラに見えるジェンダーの問題を、社会全体に張り巡らされたひとつの秩序として読み解こうとする考え方です。

定義

ジェンダー秩序は、ある社会において、ジェンダー関係が制度・実践・規範のレベルで一定のパターンをもって構造化されている状態を指します。労働分業、権力配分、感情やセクシュアリティの規範、身体への期待など、複数の次元が交差して成立しています。

文脈と歴史

20世紀後半以降のジェンダー研究のなかで、個別の差別や役割期待にとどまらず、社会全体の構造を捉える概念が必要だという問題意識から発展しました。コンネルらは、ジェンダー秩序を労働・権力・カセクシス(情緒・性愛)という軸で分析する枠組みを提示しています。

主要な論点

1. ヘゲモニックなジェンダー

ジェンダー秩序のなかでは、特定のジェンダーのあり方(とりわけ「ヘゲモニックな男性性」)が支配的な位置を占め、ほかのあり方を周縁化することが指摘されます。

2. 交差性

ジェンダー秩序は、人種・階級・セクシュアリティ・障害などの軸と交差しています。単一の軸でジェンダーを論じる限界が、繰り返し批判されてきました。

3. 変動と再編

ジェンダー秩序は固定的ではなく、運動・政策・経済の変化のなかで再編されていきます。「進歩」と「揺り戻し」が同時に起こることも、現代的な特徴です。

4. 制度との関係

労働市場、家族法、教育、メディアなど、制度のしくみがジェンダー秩序を再生産している面に注目することで、個人レベルの問題が社会的な構造の問題として見えるようになります。

TSIRの研究との関わり

TSIRが扱うテーマ——子どもを持つ選択、育児と仕事の両立、創作と生活——は、ジェンダー秩序のなかで意味づけられています。プロジェクト「子どもを持つ理由・持たない理由」では、語り手の選択を、個人の決断だけでなく、社会のジェンダー秩序のなかでの選択として読み解く視点を大切にしています。

関連する用語

参考文献・参考資料

※ 参考文献は順次追加・整理していきます。

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