ひとことで言うと
「子どもを育てている人」、特に母親が、職場での扱いや収入の面で不利益を被ってしまう構造のことです。本人の選択ではなく、社会のしくみとして生じている問題です。
定義
子育て罰(motherhood penalty)は、子どもを育てている人が、子どもを育てていない人に比べて、雇用、賃金、昇進、評価などで不利な扱いを受ける構造的現象を指します。とくに母親に集中する傾向が強く、ジェンダー研究と労働研究が交差する論点です。
文脈と歴史
20世紀末から21世紀にかけての労働経済学・社会学の研究で、定量的・定性的に分析が進んできました。雇用の中断、復帰時の処遇、評価のバイアス、家事・育児の負担などが、複合的に作用して不利益を生み出すことが論じられています。
主要な論点
1. 賃金・キャリアへの影響
子どもを持つことが、母親の賃金やキャリアに長期的な不利益をもたらすことが、各国の研究で繰り返し示されています。男性側に同様の不利益が見えにくい点も論点です。
2. 制度的要因
育児休業の取りにくさ、保育サービスの不足、長時間労働を前提とした雇用慣行など、制度的要因が子育て罰を強化します。
3. 規範と評価バイアス
「母親はキャリアより家庭」という規範や、出産後の働き方に対する暗黙の評価バイアスが、不利益を生む心理的・文化的要因として作用します。
4. 政策的対応
育児休業の整備、保育の拡充、男性の育児参加促進、評価制度の見直しなど、政策的対応が議論されてきました。実効性を高めるには制度・運用・文化の総合的なアプローチが必要です。
TSIRの研究との関わり
TSIRが扱う「育児と仕事と創作の両立」「子どもを持つかどうかの選択」は、子育て罰の構造のなかで人々が現実をどう生き延びているかを聞く営みでもあります。プロジェクト「仕事・育児をしながら創作をする理由」では、語り手たちが直面する両立の難しさが、構造的な負担と切り離せないことが繰り返し見えてきます。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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