ひとことで言うと
「何が語られているか」だけでなく、「どのように語られているか」「どんな前提のもとに語られているか」を読み解こうとする方法です。語りに含まれる枠組みそのものが、社会のなかで何を可能にし、何を不可能にしているかを問います。
定義
言説分析は単一の手法ではなく、複数の系譜を持ちます。ひとつは、言語学的な発話分析・テクスト分析の流れ。もうひとつは、ミシェル・フーコーらの仕事に源を持ち、ある時代に何が「真実」として語られうるか、その条件そのものを問う社会的・歴史的言説分析の流れです。
共通しているのは、言葉を社会的実践として捉える視点と、言説が権力や知の構造と結びついていることへの注目です。
文脈と歴史
20世紀後半の人文社会科学において、言語論的転回と呼ばれる動向のなかで、言葉そのものを通じて社会を分析する研究が広がりました。フェミニズム、ポストコロニアル研究、医療や精神医学への批判的研究など、さまざまな領域で言説分析的な視点が展開しています。
近年では、メディア言説、政治言説、ソーシャルメディア上のテクストの分析にも応用されており、量的なテクストマイニングとも交差しながら発展しています。
主要な論点
1. テクストと文脈
個々のテクストを、それが置かれた歴史的・社会的文脈のなかで読むことが、言説分析の基本姿勢です。同じ言葉でも、時代や場面によって持つ意味は変わります。
2. 権力と知
言説は中立な情報伝達ではなく、何が正常で何が逸脱か、誰が語る権利を持つかといった配分と結びついています。言説分析は、こうした権力と知の絡み合いを批判的に検討します。
3. 主体の構成
人がどのような自己像を持ち、自分を語るかは、その時代に流通している言説の枠組みに大きく依存します。言説分析はしばしば、主体そのものが言説によって構成されるプロセスに注目します。
4. 量と質の接続
大規模なコーパスやSNSデータを扱う計量的アプローチと、少数のテクストを丁寧に読む質的アプローチをどう組み合わせるかは、現代的な論点のひとつです。
TSIRの研究との関わり
TSIRが扱う「子どもを持つかどうか」「育児と創作の両立」といったテーマは、社会のなかに既に流通している語りの枠組みのなかで人々が経験を意味づけている領域です。プロジェクト「子どもを持つ理由・持たない理由」では、語り手が自身の選択をどのような言葉と論理で説明しているかに注意を払うことが、言説分析的な視点と通じています。
個々の語りを言説の場のなかに位置づけ直すことで、その人特有の経験と、社会的に共有された語り方の交差を見ることができます。
関連する用語
参考文献・参考資料
※ 参考文献は順次追加・整理していきます。
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