インタビューの要約

1. ゼロから組織を作るという創作

「仕事・育児をしながら創作をする理由」というテーマに、松江さんは草野球チームの運営で応募してくれました。ご本人いわく「多分1人で創作をコツコツやるのを想定されたインタビューかなと思ったので、ちょっと変わり種があってもいいかなと思って」。この読みは正しくて、企画の枠を一段広げてくれた回になりました。

ゼロからなんですよね、組織を作るのが。
(松江さんの言葉、note記事より)

知り合い2人から始めて、掲示板や地元新聞で募集をかけ、9人を集め、ユニフォームと道具を揃え、部費を決め、グラウンドを予約する。最初のチームは10年続き、松江さんが引っ越しで抜けるたびに崩壊し、戻って立て直した。「星の数ほど生まれて消えていく」世界で10年は、作品としてかなりの耐久性です。

2. プラス35、マイナス65。それでも作る

運営のプラスの感情とマイナスの感情の割合を聞かれて、松江さんは「プラスが35のマイナス65ぐらいかな」と即答しています。人が集まらない。連絡なしで来ない人、部費を納めずに消える人。「せっかくの息抜きの野球なのに、なんで俺こんなことしてんだろう」。それでも。

もはやライフワークのような気もするんですけど、65%マイナスな気分だとか言いながら、多分またチームを作るような気がしてて。自分の創造性が発揮できるんだと思うんですよね。

その創造性の中身も具体的です。「どのチームを見ていても、やっぱりリーダーの色がもう色濃く出る」。優しい人のチームには優しい人が集まる。チームがそのまま作品であり、自画像でもある。終盤、承認欲求という言葉をめぐるやり取りの末に松江さんが出した定義が、この回の題名になりました。「組織なんですけど、自己表現なんですよ。普通のおじさんがやっている自己表現みたいな感じか」。

3. 命綱としての草野球

20代前半、当時のパートナーの病気と満員電車の通勤で鬱々としていた時期のことを、松江さんはこう振り返っています。

その当時はもう本当に草野球が命綱でしたね。毎日会社に行きながら野球の動きのイメージトレーニングしたりしてたので。野球にすがってたと思います、おそらく。

このプロジェクトで聞いてきた執筆や絵の創作は、弱っている時期には「できなくなる」と語られることが多いものでした。松江さんの場合は逆で、弱っている時期にこそ野球はできた。「体動かす方が精神は健康ですね、間違いなく。動物は『動く物』ですからね」。身体を使う創作には、言葉や絵の創作と違う耐障害性があるのかもしれません。一方で、運営のしんどさがメンタルを削って活動を欠席した時期もあり、そこは「他の人に役割を振る」分業で立て直したそうです。支えにも重荷にもなる、その両面が率直に語られています。

4. 「才能がない、とか言わないで」

最後に企画へ寄せてくれた言葉が、このプロジェクト全体への良い注釈になっているので、そのまま引きます。

創作って、才能がある人がやるみたいなイメージが世間的にあるかもしれないんですけど、なくてもいいと思うんですよね。その人自身が満足すれば、もうその時点でいいと思うんですよ。上手かろうが下手かろうが、人から認められようがどうだろうが。

草野球でセミプロに敵わない悔しさを「クソ!」と抱えながら、それでも「コンスタントにコツコツと参加してくれる人を大事にするチームが一番いい」と言う人の言葉なので、説得力があります。松江さん、2回目のご登場、ありがとうございました。引っ越し先での体験入部、その後どうなったか、いつか続きを聞かせてください。

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note · 無名人インタビュー 松江さん|仕事・育児をしながら創作をする理由インタビュー

このコラムについて

松江さんへのインタビュー(2026年05月23日公開/聞き手:吉岡詩織)を、編集・制作を担当した私(栗林/qbc)が読み返して書いたコラムです。「無名人インタビュー」を6年やってきた人間として、編集の側で読んで何が残ったかを書きました。

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【編集・制作:qbc / 無名人インタビュー】

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