インタビューの要約

1. 「ありえない」を、笑って言う

大人が1ヶ月働いて3000円って、ちょっとありえないでしょう?
(Kさんの言葉、note記事より)

少し制度の背景を補足します。就労継続支援B型は、一般企業での就労が難しい人が、雇用契約を結ばずに働く福祉サービスです。雇用契約がないため最低賃金の適用外で、支払われるのは「給料」ではなく「工賃」。その水準の低さは、この分野では長く知られた問題です。月に3000円という数字は極端な例ではなく、この構造の中では現実に起こりうる金額として語られています。

Kさんの語りが良いのは、これを告発の口調ではなく、笑いながら、しかし前提を共有しない人に一発で伝わる形で言っていることです。制度の内側に長くいると、「工賃とはそういうものだ」という感覚に馴染んでいきます。「ありえない」ことを「そういうものだ」にしないための最初の一歩は、ありえないと口に出すことです。デュルケム風に言えば、社会的事実は、それを異常だと言う人が現れて初めて動き出します。

2. 豆腐という選択

Kさんの事業所は、大豆から一貫して豆腐をつくり、自分たちで売ります。内職の下請けではなく、市場で選ばれる商品を持つことは、工賃の構造を変える王道のひとつです。単価を自分たちで決められるものを持たない限り、工賃は永遠に「もらうもの」のままだからです。

そして、これは第三者の推測にすぎませんが、大豆から売り場までの一貫生産という形には、もうひとつの合理性があるように見えます。工程が多いということは、仕事の種類が多いということです。浸漬、加熱、成形、包装、販売。人によって合う工程は違う。多様な特性を持つ人たちが通う場所で、多様な持ち場を用意できる商品として、豆腐は理にかなっているのではないでしょうか。

3. 「学び続けられる職場」の意味

もうひとつの柱が「学び続けられる職場」です。福祉的就労の場は、ともすれば「作業を切らさないこと」が目的化します。そこに学びの機会を入れるというのは、通う人を「作業をする人」ではなく「変化していく人」として扱う、という宣言だと思います。働く場が同時に学ぶ場であるという設計は、福祉と労働と教育の縦割りを、現場が勝手に越えている例です。

「自分たちで売る」ことにも、同じ意味があると思います。作ったものが誰かに買われる瞬間に立ち会うことは、工賃の額とは別の回路で「働いた」という実感を返してくれます。学びと販売。どちらも、明日の工賃には直結しないかもしれない投資です。しかし「変化していく人」として扱われる場と、「作業をする人」として扱われる場では、通う人の一年後がまったく違ってくるはずです。月3000円という数字への異議申し立ては、金額の話であると同時に、人の扱い方の話なのだと読みました。

このネットワークの創作インタビュー(YOSHIOKA-02)には、B型事業所からデジタルイラストとアニメーションを制作しているらぐすけさんの語りがあります。らぐすけさんは、最初の事業所の作業が合わず、「自分に合う事業所って何だろう」と考えて、デジタル制作が学べる事業所を自分で探して移りました。利用者は場所を選んでいるのです。「学び続けられる職場」を作ろうとするKさんの実践と、学べる場所を探して移ったらぐすけさんの経験は、運営側と利用者側から同じ場所を照らしています。あわせて読んでいただきたい2本です。

豆腐づくりの現場の詳細と、Kさんの事業所運営の考え方の全体は、たぶ先生のnote本編でお読みください。

全文をnoteで読む

note · たぶ先生 豆腐をつくる事業所が、“学び続けられる職場”を掲げる理由

このコラムについて

Kさんへのインタビュー(2026年06月06日公開/聞き手:たぶ先生)を、編集・制作を担当した私(栗林/qbc)が読み返して書いたコラムです。「無名人インタビュー」を6年やってきた人間として、編集の側で読んで何が残ったかを書きました。

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【編集・制作:qbc / 無名人インタビュー】

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