インタビューの要約

1. 一貫して「欲しい」と思わなかった、という語り

結婚するにしても、あんまりその先に子どもが欲しいっていう感覚にはあんまりなったことがないっていうか、そこは割と一貫して、子どもは欲しいっていう気持ちにはなってなかったかなっていうところが、一貫してあるかなっていうところですね。
(サイトウさんの言葉、note記事より)

このプロジェクトには、男性の応募がとても少ないそうです。本編の中で、聞き手の吉岡さんがそう明かしています。

しかも、これまでの傾向として、女性には「産まないと決めました」とはっきり言う語りがある一方で、男性は「ふわっと欲しいかな」が多い。そのなかで、サイトウさんの「一貫して欲しいと思ったことがない」は、めずらしくくっきりしています。

マッチングアプリのプロフィールでも、子どもの希望欄はずっと「希望しない」。ぶれていないのです。

2. 語る場所がない、ということ

応募の動機を聞かれたサイトウさんの答えに、このプロジェクトの存在理由が、語る側から言われていました。

あんまり、なんて言うんですかね、大っぴらに語れることではないというか、あんまり家族とか友人とかとも喋れる内容ではないっていうのはあって。(中略)どこか自分で語ることで、なんか自分の思考の整理にもなるかなっていう風にも思って、ちょっと申し込ませていただきました。

周りは、結婚して子どもを持つルートを歩む人が多い。自分はめずらしい方なのだろうと思う。だから話さない。話す場所がない。

語る場所がないというのは、椅子がない、ということに似ています。立ったままでは、長い話はできません。インタビューは研究のためのデータ集めですが、同時に、椅子を出す仕事でもあるのだと、編集をしていて思いました。

実際、サイトウさんは受けてみて「自分を振り返るきっかけにはなった」と言ってくれています。

3. 母の「やりたかった夢」

ご両親は、進路にも結婚にも口を出さない、自由にさせてくれる親だったそうです。ただ、終盤に、こんな話が出てきます。

なんか、やりたかった夢みたいなのがあったみたいな話を聞いたりすることもあったんで。そういう意味では、今思えば、時代的にそういう時代だったっていう風に言ってしまえばそれまでかもしんないですけど、子どもを産んだことによって、家庭に押し込められたのかなっていう気持ちもちょっとしますよね。

お母様は、サイトウさんが生まれたことで仕事を辞めて、専業主婦になりました。

サイトウさんはこの話を、自分が子どもを欲しくない理由としては語っていません。ただ、同じインタビューの中に、隣り合って置かれている。つなげて説明するのは簡単です。でも本人がつなげていないのだから、隣に置かれたまま、残しておくことにしました。

4. 「独身の人に目が向けられていない」

最後に運営へ伝えたいことを聞かれて、サイトウさんは少子化の議論について、こう指摘しています。

結構、自分としては、しょうがないことなのかもしれないですけど、独身の人にあんまり目を向けられていないなっていう風には結構感じてまして。

少子化の話は、夫婦が子どもを持つか持たないか、という形で語られがちです。でも統計の上で出生数をいちばん左右しているのは、結婚しない人が増えたことのほうです。当事者であるはずの独身の人が、語る側として扱われにくい。この指摘への吉岡さんの応答も本編に収録されているので、あわせて読んでみてください。

もうひとつ。インタビューの途中、吉岡さんが「私自身が男性だったら、サイトウさんのような生き方、スタンスなのかな」と漏らす場面があります。

似た内面のふたりが、違う形の人生を生きている。その分かれ目は何だったのか。答えは出ていません。でも、この問いが記録に残ったこと自体が、このインタビューの値打ちだと思います。

サイトウさん、復職前の大事な時期に、語りにくいことを語ってくださって、ありがとうございました。

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note · 無名人インタビュー サイトウさん|子どもを持つ理由・持たない理由インタビュー

このコラムについて

サイトウさんへのインタビュー(2026年06月01日公開/聞き手:吉岡詩織)を、編集・制作を担当した私(栗林/qbc)が読み返して書いたコラムです。「無名人インタビュー」を6年やってきた人間として、編集の側で読んで何が残ったかを書きました。

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無名人インタビュー主宰 栗林康弘/qbc

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