インタビューの要約

1. 「自分の選択を、正解にするために生きる」

向山さんの語りで、私が編集として一番強い印象を受けたのは、人生に対する根本的な構え方でした。

あのタイミングで子どもを作ろうと思ったのも、その時の判断の中では最良の選択だったはずで。後からああすればよかった、こうすればよかったと言っても、どうにもならないことを言ってもしょうがない。 (中略) 自分が正しく選択できているという前提があって、むしろそれを正解にするために生きているんだ、という感覚があります。

選択した結果が「正解」になるのではなく、選択を「正解にしていく」のが生きることだ、という構え方。
シャロ坊さんが「結婚も子作りも〈普遍的な勇気〉だ」と語ったのと、別角度で力強い人生観でした。

2. 「子どもがいるのは、当たり前」

向山さんは、お父様が中学の先生だったこと、母方の実家がお寺で、いとこが8人いるという環境で育ちました。
親戚同士で集まる機会も多く、「子どもがいるというのはごくごく当たり前というか、それが自然なこと」と思って育った、と語ります。

新卒の会社で「うちは子ども作らないよ、子ども好きじゃないから」と言う先輩に出会って初めて、こういう考え方をする人もいるんだ、と気づいたほど。
向山さんにとって子どもを持つことは、選択というより前提に近かった、ということです。

環境による刷り込みは、本人がそれを当たり前と感じている限り、なかなか「選択」として意識されないものです。インタビューが、その当たり前を「これは私が選んできたことなのだ」と意識化する場になる──ここにライフヒストリー法のはたらきがある、と私は読みました。

3. 田舎で、公立で、価値観の多様性のなかで育てる

子育ての現在については、明確な方針が語られています。
都内の埼玉から、向山さんが生まれ育った小田原へ引っ越し。実家の裏は山という、里山に近い環境で育てる。教育は中学受験を選ばず公立、その理由は多様な価値観のなかで育ってほしいから。

勉強ができる子たちばかり集まった中で育つよりは、色んな価値観がある子どもたちの中で育った方がいいと思っているので。 (中略) 頭いい子もいれば勉強できない子もいる、運動できる子もできない子もいる、お金持ちの子もそうでない子もいる。

「みんな違う方が、社会としても種としても強い」という、生物学的多様性の論理を、子育ての場面の意思決定にちゃんと接続している。
田中さんが「大きな話と生活を安易に繋ぐな」と警告したのとは別の角度で、向山さんはその二つを自分の生活レベルでつなぎ直している姿でした。

4. 「子どもを産むのは申し訳ない」を、否定する

向山さんは、社会の将来が不安だから子どもを残したくない、という考えに対して、明確に立場を示しています。

この子が生まれてこんな世の中じゃかわいそう、と思うなら、大人が何とかして環境を整えてあげなきゃいけないんじゃないか、と。やらずして投げてどうするの?と思いますね。子どもって基本的に生まれたがっているはずなのに、そういう理由でそれをとどめてしまうのは、遠回しに生まれたがっている子どもを殺すことのような気がするんです。

強い言葉です。
社会が悪いから産まないのではなく、産んだうえで大人が何とかするべきだ、という方向の倫理観。
20代の松江さんが「この社会には残したくない」と感じていた立ち位置と、ちょうど対称をなしているのが面白いところです。

5. 編集として、最後に

向山さんは副業でコーチング・カウンセリングを行い、小中学生の前で「おとなインタビュー」というプログラムにも立っています。
そこで子どもたちに伝えているのは「夢は変わってもいい」というメッセージ。「夢を持て」と大人から押し付けられて窮屈になっている子どもたちが、ほっとしたとアンケートで答えてくれる、と。

自分が選んできたことを「正解」にしていく、という構え方は、子どもにも別の言葉で渡されている。
インタビューを通じて、家庭の中と外で、向山さんの人生観がひとつにつながっているのが見えてきました。

向山さん、お話を聴かせてくださって、ありがとうございました。

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note · 無名人インタビュー 向山さん|子どもを持つ理由・持たない理由インタビュー

このコラムについて

向山さんへのインタビュー(2026年3月25日公開/聞き手:吉岡詩織)を、編集・制作を担当した私(栗林/qbc)が読み返して書いたコラムです。「無名人インタビュー」を6年やってきた人間として、編集の側で読んで何が残ったかを書きました。

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【編集・制作:qbc / 無名人インタビュー】

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