インタビューの要約
- インタビュイーは一人っ子で育ったメケさん。「子どもはいつか欲しい」と中学生の頃から思っている
- 両親はフリーダムなタイプ、母は「子どもは嫌い」と公言、父は子育てが得意ではなかった
- 子どもの頃にゲームを禁止された経験から、「自分が親になったら自由にさせたい」という育成論を持つ
- 「持たないより持って失敗するほうがマシ」「シンプルにやってみたい」というシンプルな動機
- 自分の遺伝(吃音、いわゆる発達特性)を子どもに引き継ぐことへの懸念がある
1. 「シンプルに、やってみたい」
メケさんの語りで、私が編集として何度も書き取ったのは、子どもを持ちたい理由のシンプルさでした。
シンプルに、一回も経験したことがないものはやってみたい。シンプル。
社会への希望や使命感ではなく、「自分が経験したことがないから、やってみたい」。
生殖技術への姿勢も同じ調子です。「全然肯定的ですね」「将来お世話になるかもしれない」と、必要があれば淡々と利用するスタンス。
重い議論を経由しない、軽やかな肯定が、メケさんの語りの基調にあります。
2. 親と「自分のあいだの距離」
メケさんは一人っ子として育ち、ご両親はかなりフリーダムなタイプだったそうです。
お母様は「自分の子どもはいけるけど、他人の家の子どもをお世話しようとは思わない」と公言。お父様もメケさんを「面白い存在」として見ていた、という。
子ども時代は病弱で休みがち、ご両親が衝突する場面も繰り返された。「あまり子ども扱いされたことはないかなあ」という言葉に、ご家族との距離感が現れています。
その経験から、自分が親になるなら違う関わり方をしたい、というビジョンが育っていく。中学生の英語の授業では「子ども五人ぐらい、24歳で結婚」という未来図を語って笑われた、というエピソードまで残っています。
3. ゲーム禁止から始まる、独自の育成論
メケさんの語りで、特に印象的だったのがゲームの話です。小学校の頃に与えられたゲームを翌年から禁止され、押入れを改造して隠れてやっていた、という青春。
俺が子どもをもし作ったら、ゲームやらせてあげたいなと思ってるんですよね。「これはやめといたら」って禁止をあまりさせないようにしたい。
禁止された経験を反転させて、「自分が親になったらこうしたい」という育成論にまで仕立て直している。
これは社会学では 世代間の伝達と切断と呼ばれる現象に近いと、私は思います。同じことを次の世代に繰り返すのではなく、自分の代で意識的に切り直そうとする。メケさんの語りはその試みの記録でもあります。
4. 「自分の遺伝」への懸念のこと
シンプルに「やってみたい」と語る一方で、別の場面ではこう言葉が出ます。
これで俺頭良くなかったらどうなってたんやろ。真面目そうな見た目してるから、外見的な不利が少なかったから生きてこれてるけど。
自分の特性(吃音、ものすごい忘れっぽさ、簡単な事務処理への苦手意識)を、自分自身がどうにか乗り越えてきた経験。
それを子どもに引き継ぎたくない、という気持ちが「もし産むなら女の子がいい」という発言につながっていきます。
「シンプルにやってみたい」と言いつつ、引き継ぐことへの慎重さもちゃんと併存している。一人の人の中に矛盾が同居しているのが、ライフヒストリーを聞く面白さでもあります。
5. 編集として、最後に
メケさんの語りは、終始テンポがよくて、軽妙です。お酒を飲みながらレモンサワー片手にインタビューを受けてくださって、八時間でも喋れるという声に、私は何度も笑いました。
でもよく読み返すと、その軽妙さの裏には、自分のままでこのまま生きていきたいという構え方が通底しています。社会に対しても、「子供に優しい社会にしてほしい」という素朴な願いが、最後にぽろっと出てくる。
メケさん、お話を聴かせてくださって、ありがとうございました。
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このコラムについて
メケさんへのインタビュー(2026年4月3日公開/聞き手:吉岡詩織)を、編集・制作を担当した私(栗林/qbc)が読み返して書いたコラムです。「無名人インタビュー」を6年やってきた人間として、編集の側で読んで何が残ったかを書きました。
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世代間の伝達と切断/ライフヒストリー法/ナラティヴ・アイデンティティ
【編集・制作:qbc / 無名人インタビュー】